たそがれ清兵衛

藩命により刺客となった清兵衛はやっとのことで任を果たす。が、自身も片腕に傷を負う。二人の娘が待つ家にたどり着くと、大きな仕事をなしとげた刺客から普段の父親の姿にもどる。だが、充足した歓びはない。わびしい、さびしい、ひとりの男のくらい眼差しが、暗い家の奥を見る。
 あろうことか、叶わぬはずの妻としての女が、そこに待っていたのである。その、光明が宮沢りえさんであります。その、姿はもはやアイドル系のタレント女優ではない。きちんとした立ち振る舞いの美しい、格調ある宮沢りえさんなのです。
さて、映画の中の食事についてであります。5歳になる娘がかつお節をけずる。8歳の娘が野菜を刻み、鍋でかゆを煮る。それを清兵衛が沢庵をかじりながら、サラサラと掻きこむ。うすい、うすいかゆなのです。これが、毎朝の食事である。清貧そのものの食事である。我等、腹具合の悪い時ぐらいしか、こんな食事はしない。
 日々のダラクを少し反省したい方々、この映画は実に深く美しい日本映画ですぞ。

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