真夜中の空騒ぎ

 ヤクザ 元暴走族のあんちゃん 男色の高校教師 ドロップアウトしたボクサーそして 酔い潰れて道に寝ている不動産屋 などなど。  この店は 深夜になると やばい風情の輩が 集まってくる。

 ある金曜日の夜 店はすいていた。 東海村の原研で仕事をしている という若者が ひとりいた。 若者と他愛もない 世間話をしているころに 相当に酔った 40さい位の女 3人が入ってきた。 ワイワイ ガヤガヤ うるさいのに加え 理性がはたらいて いないから 言葉も汚い。
 ケイタイをもって 外に出たり入ったり その度に戸が開けっ放しなる。 若者と俺は そのうち おさまると ガマンした。 あまかった。 女達の狼藉はやまなかった。 俺は声をあらげながらも きわめて低調に
 「すこし 静かにしてください。 戸をちゃんと 閉めてください。」
 女の狼藉ことばが かえってきた。
 [閉めりゃあ いいんでしょ」  このヒステリック一言で 向かいの席にいた まじめな若者が きれた。
 おもいっきりバセイを 浴びせた。 すごい勢いで なじった。 いまにも 立ち上がらん ばかりの 力がみなぎっていた。
 若者が 一息したところで 俺は 仲裁者の 振る舞いをして おたがいをなだめた。 
 「俺たちは 静かに飲みたいだけだから 」 と言って仕切った。
 女の一人が 外に出て電話しているが それ以上事があれるようではなかった。

 10分程 たって ガラッと 戸があいて客が入ってきた。 180はある大男 金髪で 日焼けサロンでこがしたような ガングロ 指と手首には 黄金がひかり輝いている。 深夜にもかかわらず 色メガネをしている。 どうみても まともではない。 とっさに やばいと 腰がういた。 
 女が電話をしていたのは 大男を呼び出す ためだったのだ。
 ドスのきいた声で
 「なにがあったんだよ  こんな時間に呼び出すなよ 」
 静かにしていた 女達が 再びわめきだした。
 「うるせぇんだよ あの二人の男がよ 」
 若者はどっしりと座っていた。 俺は逃げ出す 算段をしていた。 大男はきびすを返しながら 顔をむけ ゆっくりと色メガネをはずし なにかを言おうとしていた。 俺は おどし文句をまった。 ところが 大男は あろうことか 相好をくずしながら
 「あのぉ 婆娑羅のマスターですよね」
 「あっ  はい 」
 「その節は お世話になりました」
 「あっ  いえ どうも 」  と返答してみたものの 顔に見覚えが あるも 何者かわからない。  大男は 女達の席にもどりながら
 「人にめいわくかけるような 酒のむな 」「婆娑羅の マスターだよ しってんだろ。」 

 騒ぎは 荒れることなく 決着にむかった。 しかし 俺の心中は 騒いでいた。 えらくもなく  強くもなく  有名でもない 俺が こわそうな お兄さんに 礼を言われ しかも 騒ぎがあざやかに おさまってしまった。
 以後も 俺は この店の常連である。 お兄さんには しばらく会っていない。 あまりあいたくないが、、、。
 この店は実在しているが 名は伏せておく。




追記  五月も新潟の酒  雪中梅です。
 岩手のほや  伊豆のアジが 今朝の取っておき

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