宗教家 来訪

 爆買いという言葉があるのだから 爆女という言いまわしも許されるかもしれない。  口角にぎやかで身ぶり手ぶり元気によく動く。 二人の中年男にはさまれて強気なキャリアウーマンらしき風貌を見た。 だが女のたしなみはとっくの昔に放棄したらしく残念ながら色気の香がない。

 「あなたたち つけてるモノが達者じゃないでしょ!」
 「きたえなおしてあげるから、あたしのところに来なさいよ!」 なんて
爆女の片鱗も見せてくれた。 二人の男は仲間であるが、仕事なのか酒飲みの友なのか そこのところが見えてこない。


 「私の欠点はねぇ、まるで色気がないことね。 マイフェアレディのヒギンズ教授がイライザを育てたように、私に女の所作や礼節、奥ゆかしい心なんかを指南してくれる人がいなかったからね。 あたしの教育係は殆どが男で人文科学係より物理や数学や医学係の人がほとんどだった。 物事をはっきり理路整然と教えてくれたけど 人間の心のゆったりとした流れみたいなのは苦手だったなあ。 それに、この国に生まれた者は等しく、当たり前に受けられる義務教育というものを受けていないからねぇ。 大きな体育館みたいなところで大勢のオトナにかこまれ、かわいがられ、だっこもされ、誰からも叱られず、うとまれたり、ムシされたりもなく無限の自由と幸福の中で暮らしていたのよ。 でも人間ってものはちゃんと気づいちゃうのよ。 私って実は不自由。 いつも誰かがいて、何か作ったりすると もう そこに手伝ってくれる人がいて、どっかに行こうとすると必ず誰かがいて。 私は早熟な子供だったから、ここから出てもっと違うところに行きたい、と父に向って言ったことがあるの。 父は背を向けたまま、私は父の顔をみたことがないのよ。 父はいつだって、どこだって背を向けてジッート座っているだけの人なの。 それで、もう少し待ちなさい、必ずどこかに行ける日が来るからね、と。 それまではこの自由共同牧場で暮らしなさい。 でも、私はこの自由が嫌いだった。 この共同が嫌いになった。 そして、知っての通り自由からの逃亡大作戦がはじまったわけよ。」 

「草原で牛や羊や馬やらがところどころにいるだけで、来る人も出る人もいないから、月明かりのある夜、私の家出は決行されたの。 ああ こわかったなぁー。 女12才無鉄砲。 そして杉並に着いたのよ。」


 この爆女さんの話に聞き入っている二人は 終始 笑顔をたやさず、ありがたそうにしている。 エライなぁーと感じずにいられなかった。
 それは爆女さんが持つ生まれながらの異質、激しいエネルギーのほとばしり、神秘なるものを感受する特性(サッカク)なのでしょうか。 お二人の中年さん、今夜はお疲れさまでした。
 必ずや愛する神々の降臨あることでしょう。


追  強く、たくましく、勇ましき女傑に、なぜか むかしから好まれるのです。

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