ブローニュの公園やセントラルパークの広い公園(行ったことないが)の片隅にあるベンチで男と女が抱き合い、首に腕をまきつけて接吻などをこころみている光景はうらやましくもあり、仲良し同志の人間を眺めるのはいいものである。 仲良しの夫婦 仲良しの恋人 仲良しの会社員 仲良しの酒仲間と、色々な人々が来る。 先日は仲良しの不道徳カップルが来た。 教会でもないのに夜の飲屋に仲良く腕組みしてご登場である。 うるわしくねぇ野郎だなあと思っても、あいにく席が空いてるからお座りいただいた。 酒の酔いも手伝って、女は男の首に手を絡ませている。 次に唇をよせていく。 俺はその瞬間 “それはダメ!” と語気荒く言った。 “ここは、そういう店じゃない。” “おおやけの場所、まちがえないこと” 他のお客さん達に気づかれぬように静かな口調で二人を叱った。 格別 取り立てるほどの美男でも美女でもないから、このような無作法に走るのだ。 凡庸な男と女のケチのついている不道徳恋愛に溺れているだけだ。 はやく ジメジメとしみったれた暗い部屋に帰って二人だけで楽しめと 腹の底から怒ってしまった。 媚びる女に、それに酔い痴れる男、人間に限らず 生きとし、生けるものの「オス」と「メス」の営みにはつきものだから仕方ないとは言え、ここはブローニュの森ではない。 広いセントラルパークでもない。 まもなく、居場所がそぐわないから不道徳と恋愛の男と女はそそくさと帰られた。 たとえ よろしくないとはいえ、「男・女」のカップルなのだから通常の振る舞いをしていれば何てことはないのである。 「男・男」や「女・女」の恋になると、少しばかり厄介なことになるのであるが、その当事者が、ひるむことなく世界に対して 「あたしゃ 男色だぜ」 と明言なさる位の男だったら、俺は優しく喝采を送る。 なぜなら、俺がそういう人間だからではなく 同性愛というは世間の秩序・常識への異議申し立て、反抗であろうと思うからだ。 ちょっと性急かな! でも、男にモテると自負している俺だからこその眼先である。 |